運命の一夜を越えて

少し乱れた髪と、動作からかなり瀬川渉が急いでくれていることが分かる。

「かかりつけの病院ってある?」
携帯の画面から私の方へ視線を移す。
私は話をする余裕もなくて首を少し横に振った。

「しんどいな。遅くなってごめんな。待ってろ。病院行こうな。」
優しい声でそう言って少し微笑む瀬川渉。

どうして・・・

どうしてこの人は私に謝るのよ・・・


謝らないとならないのはいつだって私なのに。

彼は何も謝らないとならないことなんてしてないのに・・・

むしろ私が感謝を伝えないとならないのに・・・