運命の一夜を越えて

テーブルに背を向けた瞬間私は大きく深呼吸をして、愛想笑いの仮面を外した。

トイレで時間を少しつぶそう。

女性用の個室に入り鏡の前に立つ。
じっと自分の顔を見て大きく深呼吸をする。

化粧もはがれかけ。
これで大手化粧品メーカー勤務だなんて笑っちゃう。

毎日化粧はしっかりとしているため、それに見合う服装をしなくてはならない。
高いヒールの靴に、ネックレスやブレスレット、指輪をしている。
あまり派手なものは好きじゃない。

自分の身に着けるものを選んだり、新しいものを見つけるのは嫌いじゃない。

でも、この場所には化粧を直してくる必要性がない。
いつも以上に着飾る必要なんてない。

だって、私は誰とも恋愛しないと決めているから。