運命の一夜を越えて

今回の手術は赤ちゃんを出産するだけではなく、状況を見て一緒に手術室に入っている渡部先生ががんの進行状況も見る。

一度開いている腹部の状態を把握することも今回の手術の目的だった。

そして私は麻酔から覚めたらすぐがんの治療を優先的に受けることにしていた。

だから、本来部分切開で済む手術も、私は全身麻酔で受ける。

手術室に渉がいてくれても、しばらく渉と話をすることができないかもしれない。

「どうした?」
私の不安を察して渉が私の手を握り、もう片方の手で髪を撫でてくれる。

そんな渉の手が珍しく冷たい。

渉も緊張してるんだ。

私はできるかぎり精一杯自然に微笑んだ。