運命の一夜を越えて

いつの間にか私はあきらめていたのかもしれない。

この子をこの世に産みだすことが私の命の終わる瞬間なのだと勝手に思ってしまっていたのかもしれない。

体が言うことを効かなくなって、不調が続いて心まで病に侵されていたのかもしれない。

「諦めたらだめだ。」
「・・・」
「がむしゃらにでも、なんでも、命にしがみついてほしい。」
「・・・」
「生きてほしい」

渉の言葉に私は止まっていない涙がさらにペースを上げて流れ始める。

「愛してる。生きよう。彩。生きよう。」
その言葉に頷きながら私は渉の瞳を見た。