「渉、この動画はこの子が20歳になる誕生日の分まで撮影してあります。でも、すべてをこの子に見せてほしいわけじゃないことを理解してほしいの。

あなたが判断して、この子にとって必要であれば見せてほしい。

私がのこしたこの動画によって、この子が悲しい思いをしたり、悔しい思いをしたり、複雑な気持ちになるかもしれない時は、このDVDはそっと処分してください。

この子に何かをしてあげたい。何かをのこしてあげたい。でも、まだちゃんと母親になっていない私には正直何をのこせるか、わかりません。1歳の子はどのくらいの成長をしているのか・・・2歳のこの子はどんな言葉を話しているのか・・・わかりません。
だから、この子がいつどんなことを知って、どんなことができるようになって、どんな悩みを持っているのか、私にはわかってあげられません。だから、この動画は、渉が管理して、この子に必要だと思った時だけ見せてあげてください。

渉の世界一やさしい父親になるって言葉、すごくうれしかった。
渉、私はこの子にとって世界一の理解者であり、優しく守れる父親にあなたがなるって、信じています。ううん。確信しています。
いろいろ苦労もさせてしまうとおもうけど、きっとこの子はいい子。だって渉の子だもん。
だから、この子のことをお願いね。」
彩の声に俺は自分に対して憤る気持ちがすっと和らぎ、再び画面にくぎ付けになる。