運命の一夜を越えて

「ぐずぐずしてたらダメだよな。この子はちゃんと生きてるし、今だって話、聞いてるもんな。」
渉は私の体を自分の方に抱き寄せて私のお腹に触れた。

こんな風に渉に赤ちゃんの存在を温かく迎えてもらえるとは思っていなかった。

赤ちゃんを思ってもらえている渉の気持ちが、私のことのようにうれしい。これはすでに赤ちゃんと私が見えない何かで繋がっていることなのかとうれしく思った。

「彩が運ばれた時、この子の心臓の音を聞いたんだ。」
「うん」
高梨先生がその時の顔を見せたかったと言っていたことを思い出す。
私も見て見たかった。
「ちゃんと生きてるんだよな。」
「うん」
「うまれてなくてもさ、ちゃんとひとりの命なんだよな。」
「うん」
話をしている渉はすでにパパの顔のようにも見える。

きっと渉はいいパパになる。
そう確信している。