運命の一夜を越えて

「一度しか言わない」
泣きながら私が渉に声をかけると、渉が痛そうな表情をしながら私を見た。

「ごめんね・・・」
最後は泣き声になってしまったその言葉に、渉は泣きそうに顔をゆがめてから、ぎこちなく微笑んだ。

そして首を横に振る。
「俺は世界一やさしくて親ばかな父親になる。」
「・・・渉・・・」
「女の子ならパパって呼んでほしい。男の子なら親父って呼んでほしい。女の子ならピアノと習字を習わせて、男なら剣道と水泳を習わせたい。」
「・・・うん」
「女の子なら一緒に料理をして、男の子なら一緒にキャッチボールをする。」
「・・・うん」
私のお腹に重ねている私たちの手は熱く、震えている。

「礼儀正しい優しい子に育ってほしい。」
「うん」
「健康で多少のことではめげない強さを持った子に育ってほしい。」
「うん」