運命の一夜を越えて

「渡部医師から、瀬川さんの今までの病歴をうかがいました。」
渡部先生は私の主治医だ。

「今回、精密検査を行うことが決まる前の段階で、瀬川さんの妊娠が分かっていました。」
「え?」
私も渉も訳がわからず頭が真っ白になる。

「驚かれるかと思います。きっと妊娠は難しいとお思いだったと伺っています。事実として、一番女性としてのホルモンが活発になり、体が発達する時期に抗がん剤による治療を受けられていた瀬川さんが妊娠する可能性はかなり低かったと思います。普通だと不妊治療をしても妊娠できないというケースも多いです。」
「うそ・・・」
「じゃあ、最近の体調不良は妊娠が原因だったのですか?」
一筋の希望に願いを込めるように言葉を吐き出す渉。
私もそう願いたい。

渉の言葉に、高梨先生は言葉に詰まったように見えた。
すぐに渡部先生が話始める。