運命の一夜を越えて

「怖かった。死んじゃうってどういうことなんだろうってわからなくて怖かった。真っ暗な世界にひきこまれていくようなイメージはなくて、病院の真っ白な天井に吸い込まれるようなイメージだった。」
「うん」
「でもね、それ以上に、私が心配だったのは、不安だったのは」
「うん」
「お父さんとお母さんを置いて逝くこと。」
私が病院の天井から渉の方に視線を移すと、渉は眉を寄せて切ない視線を私に送っている。
「大好きな、大切な二人を置いて逝くことが怖かった。きっといっぱい泣いちゃうんだろうなって。」
「・・・うん」
「あの時」
「ん?」
私の手を両手で包み込むように握る渉。

「私が倒れて、渉が病院に連れてきてくれた時」
「あぁ」
「久しぶりに病院の天井を見上げながら病室に横になっていた時」
「うん」
思い出したように渉は懐かしいまなざしにかわる。