運命の一夜を越えて

痛くてつらくて悲しくてどうしようもなかったあの頃の記憶・・・。
怖かった記憶。

急にあの時のつらい記憶がよみがえり、何も考えられなくなる。

「彩?」
気付けば私はうまく息ができなくなって、座っていた椅子から落ちそうになっていた。
「彩!」
咄嗟に渉が私の異変に気付き、受け止めてくれる。

目の前に座っていた医師もすぐに私を支えてくれた。

「・・・はっ・・・はぁっ・・・ごほっ!」
「彩、ゆっくり息しろ。大丈夫。落ち着け。」
過呼吸になる私を抱きしめる渉。
その背中にしがみつくように手をまわす。

医師はすぐに看護師に指示を出して私に安定剤を処方しているようだった。