運命の一夜を越えて

「さっき来てくれたのよ。」
「どうして」
後ろから母に話しかけられて、私は母の方を見た。

「昨日ね、たまたま連絡をくれたのよ。前にもらったお土産のお礼を送ってたから、それが届いたって連絡。その時におばあちゃんが亡くなったことを言ったら、手伝いに来てくれるって。今日、仕事をしてから来てくれたのよ?あんたに言うと止められるから内緒にしてくれって。ついてすぐに手伝い始めてくれたんだけど、本当に気が利いて・・・助かっちゃった。」
親戚たちも微笑ましそうにしながら話をしているその中心には喪服姿の渉がいた。
お酌をしたり、食べ物をすすめたり、空いたお皿を下げたり・・・。

「あんなにいい彼氏、いないわよ?」
母はそう言って微笑んだ。
「次、お母さん休憩して」
話題を変えようと母に言うと、「あんた、全然顔色よくなってないじゃない」と私の額に触れた。
「脂汗かいてるじゃない。具合悪いんでしょ?大丈夫?」
心配そうな母の声に数人が私たちの方に視線を向けているのが分かった。
「大丈夫だから。こっちは任せて」
そう言って母の背中を押すと母はすぐに戻ると言っておくの部屋に向かった。