運命の一夜を越えて

「また会いたい。もっと話がしたい。もっとあなたのことが知りたい。」
「・・・っ」
「俺にチャンスをくれませんか?」

「ダメです!無理です!」
赤信号をちゃんと言葉にできた自分をほめたい衝動にかられながらも、私が口にした言葉に、瀬川渉は再び豪快に笑う。

「拒否られちゃったかー。でも負けませんよ。」
「はい?」
「俺、諦めたくないんで。」
「どうして」
「どうしても。」
「ダメです」
「ダメって言われてもダメです!」

この男は私が思いつく限りの言葉で拒否をしても、すぐに言い返してくる。

しばらくこの押し問答を続けていると、周りのお客さんの目が視界に入り、私たちはひとまずお店を出た。