運命の一夜を越えて

はじめよりは少しマシになったラーメンの汁のあとを見て、私は手を止め、おしぼりを机に戻すと縛っていた髪をほどいて立ち上がった。

「お会計お願いします。」
その場から店主に声をかける。

「ここは俺のおごり。」
瀬川渉も立ち上がる。

「いえ、私初対面の人にはおごってもらわない主義なんで。あっ、今日の合コンは別です。」
私の言葉に瀬川渉は少し圧倒されたのか押し黙る。

だいたいの男はこうして距離をとるような言葉を投げかけると、引くか、距離をとるか、怒る。

この男はどんな反応をするのかと私はその表情の変化に注目した。

瀬川渉は・・・
「ぶっはははっ!」

盛大に吹き出して笑った。