「話しかけたらおばあちゃんはこれからデートなんだって言ってたんだ。すごい格好していてさ、そのおばあちゃん。」
私の記憶の中ではそのおばあちゃんはズボンの上からスーツのスカートを着ていた。首にはいくつものスカーフを巻いていて、足元はなぜか裸足に左右違う靴とサンダルを履いていた。
私が渉の方を振り返ろうとすると渉は「やっと思いだしたか」と笑った。
「あの時、俺は何とかして駅の事務所にそのおばあちゃんを誘導しようって思ってたんだけどさ、そのおばあちゃんはデートなのに、お化粧するの忘れちゃったから恥ずかしいって言って気が動転していてさ。話なんて全然通じなくて。」
「私が持っていた口紅、おばあちゃんにあげた。」
「そう。ついさっき俺の目の前を早足でヒール鳴らして忙しそうに歩いて行ったきれいな人が戻ってきたって思ったんだ。俺。」
あの時はおばあちゃんにばかり視線を向けていて、その時一緒にスーツ姿の男の人がいたことを私はすっかり忘れていた。
「おばあちゃんに誰とデートなのかを聞いたり、そのおばあちゃんに話し合わせてさ、安心できるように口紅塗ってあげて、もしもデートで食事をしたらそのあとに必要だからって、彩はそのおばあちゃんに口紅を渡してた。」
「・・・化粧品会社の社員だけあるでしょ」
「はは。でも、あそこまではできないよ。」
「そんなことない。」
少し恥ずかしくなって渉から視線を外し、景色を見る。
私の記憶の中ではそのおばあちゃんはズボンの上からスーツのスカートを着ていた。首にはいくつものスカーフを巻いていて、足元はなぜか裸足に左右違う靴とサンダルを履いていた。
私が渉の方を振り返ろうとすると渉は「やっと思いだしたか」と笑った。
「あの時、俺は何とかして駅の事務所にそのおばあちゃんを誘導しようって思ってたんだけどさ、そのおばあちゃんはデートなのに、お化粧するの忘れちゃったから恥ずかしいって言って気が動転していてさ。話なんて全然通じなくて。」
「私が持っていた口紅、おばあちゃんにあげた。」
「そう。ついさっき俺の目の前を早足でヒール鳴らして忙しそうに歩いて行ったきれいな人が戻ってきたって思ったんだ。俺。」
あの時はおばあちゃんにばかり視線を向けていて、その時一緒にスーツ姿の男の人がいたことを私はすっかり忘れていた。
「おばあちゃんに誰とデートなのかを聞いたり、そのおばあちゃんに話し合わせてさ、安心できるように口紅塗ってあげて、もしもデートで食事をしたらそのあとに必要だからって、彩はそのおばあちゃんに口紅を渡してた。」
「・・・化粧品会社の社員だけあるでしょ」
「はは。でも、あそこまではできないよ。」
「そんなことない。」
少し恥ずかしくなって渉から視線を外し、景色を見る。



