運命の一夜を越えて

「ありがとうございました・・・」
実家にとまるために、着替えも泊まりに必要なものも持っていた私は自分の部屋着に着替えて、借りたタオルを首にかけて浴室から出た。

「頭、濡れてるだろ」
渉は浴室の扉の前の廊下に座って私があがるのを待っていたらしい。
立ち上がるとすぐに、私の体の向きを再び浴室の方へ向けて洗面台の前に促した。

「ちょっと待ってろ」
そう言って浴室から出た渉はどこからか椅子を持ってきた。
「ほら、座って」
私を椅子に座らせると、慣れた手つきでドライアーをかけてくれる。

「上手・・・」
ついこぼした言葉に笑いながら、うれしそうな表情で渉は答えた。

「母親の髪、かわかしてからなー。」
渉のお母さんもがんだったと聞いた。
「お母さん、家で看てたの?」
発見した時には全身に転移していたという渉のお母さん。