運命の一夜を越えて

「行こうか」
「・・・」
渉は誰もいなくなったエレベーターで再び私の手を握った。

「寒い?」
私の手がかなり冷たかったらしく渉が心配そうに私の顔を覗き込む。
ただ首を横に振ることしかできない私。

「嘘つき」
そう言って微笑みながら、渉は16階で止まったエレベーターから私の手をひいておりた。
フロアにはそれぞれの部屋の前にちゃんとした玄関と門がある。
観葉植物や自転車などを置いているほかの家と違い、渉の家の玄関には何も置かれてはいなかった。

門を開けて私を通すと、渉は家の玄関を開けた。
何となく敷居をまたぐことに罪悪感があって、立ち止まる私に、渉は「ほら」と手をひいた。

「いらっしゃい。」
広い玄関に長い廊下。