運命の一夜を越えて

「隣の家に回覧板っていうのをまわすんだけど」
「知ってる。俺の実家にもある」
「隣の家っていうのが歩いて10分かかる」
「俺の実家もそう」
私たちは同じような環境で育ったのかもしれないと思いながら私は地元の話を続けた。

ひとしきり地元の話をすると彼は「見てみたいな。彩が育った場所。」とつぶやいた。

きっと彼は私が自分の実家に、彼を同行させたくないと思っているらしく、実現しないことを予想しているような表情だった。

好きな人にそんな表情をさせていることが心苦しい。

「ちなみに俺は母親がいないんだ。俺が10歳のころ、病気で亡くなった。」
「・・・」
「父親は個人病院を経営してる。海までは歩いて5分。隣の家までは歩いて10分。買い物は近くの個人商店でするけど、その個人商店までは車で15分以上かかる。冬になるとかなり雪が積もって、雪の壁ができるんだ。」
渉の話を聞きながら、私の話を聞いていた渉の気持ちがわかってしまった。