運命の一夜を越えて

「ラーメン食べたらそれぞれ帰る。」
「行きません」
「せっかくうまいラーメン屋なのに。」
「行きません」
「おごる」
「もっと行きません」
この男にはおごられたくない。

あっもう食べちゃっているこのイタリアンの料金を除いては。

「俺の大好きなそこのラーメンを食べて、俺のことを知ってよ。」
「は?」
つい乱暴な態度を見せて振り向いてしまった私に、その男は笑う。
やっと本性をだしたなって顔をしながら、話を続けるその男。

「そのラーメンがうまかったら、次は俺の大好きな居酒屋に行こう。」
「まずかったら?」
「二度と誘わない。今日限り。」
「・・・」
瀬川渉というその男は私をじっと見つめながら、私の返事を待っている。