運命の一夜を越えて

自分の心からあふれる言葉を素直に言うことも初めてだ。

こうして心からの言葉を口にできるのは渉が作り出す雰囲気があるからだ。

出合ってから、私のテリトリーの中にぐいぐい入ってくる渉。
でも、決して無理やりじゃない。

ちゃんと私の呼吸に合わせてくれている。

私の準備ができていなければそれ以上、渉は踏み込んでこないことを知っている。

「これ」
「ん?」
急に目の前に出された渉の握りこぶし。
「なに?」
「ほら」
ぐいっと私の目の前に差し出されたその手に、思わず手を伸ばす。

「はい」
そう言って渉は私の手を開くとその中に何かを渡した。