運命の一夜を越えて

「ピザにかぶりついてる君の方が断然好きだけどなー。」
ほら。安易に好きという言葉を出す男ほど信じられない。

「俺、瀬川渉(せがわ わたる)って言います。」
私は名乗ってやるものかと、愛想笑いでごまかす。

「戸田彩さんだよね。」
しまった・・・合コンの初めにみんなで自己紹介したんだった。

「その時々敵意むき出しにする顔、うける」
うけるなよ。

心で暴言を吐きながら、男性のペースにのらないように気を付ける。

「一次会、そろそろ終わるらしいんだ。よかったら一緒においしいラーメン屋に行きませんか?」
「行きません」
もちろん即答する私。

「うまいよーそこのラーメン。イタリアンなんておしゃれすぎてさ、食べた気しないだろ?ラーメン一杯だけ食べたら帰るから。」
「結構です。」
私は瀬川というその男性に背を向けてテーブルに向かい歩き出す。