「母さん、ここからは僕が話すよ」
と、私の隣に腰を下ろした翡翠は「騙してごめんね」ともう一度謝り、「でも話を聞いてほしい」と真剣な目で訴えた。
「マリーは知らなくて当然なんだけど、僕がマリーを見つけたのは10年前の魔女集会の日」
…10年前の魔女集会?
「その日は母さんに無理を言って集会に連れて行ってもらって他の魔女たちからは見えない部屋で集会の様子を見てたんだ。その時に、一際目立つ緋色の長い髪を揺らした魔女を見つけた」
今はミディアムになってしまって短いけど、確かに10年前は腰の長さまであった。
あの日、どこかの部屋で翡翠は私を見てた。
「他の魔女は何ともなかったのに、マリーを見た瞬間目が離せないほど惹かれた」
集会が終わって次に見れるのが1年後、そんなの待てないから彼女を呼んでと母さんに我儘を言ったんだ、そしたらそれは一時の感情だって言われたよ。
と、10年前の気持ちを思い出すかのように眉を八の字にして少し寂しそうな顔をした翡翠。
大魔女様は「あの時初めて我儘を言ったかと思えば、とんでもなかったからさすがの私も驚いた」と零した。
「でも半年たっても1年が経とうとしても気持ちは消えることはなかった」
「そして1年後の魔女集会で…」
「そう、母さんの魔法で人間に近づくように魔力を封じ込めてもらって、わざとボロボロの姿でマリーの前に現れた」
なるほどね、全ては10年前から始まっていたの。
確かに、大魔女様の力をもってすれば魔力なんて押さえ込んで、あたかも人間かのように見せることができる。
「たった1年だったけど、それでもマリーの美しさは変わらなかった」
「どんな性格かも分からないのに、よくそんな大胆なことができたわね。想像と違ったらどうしていたの?」
「それでも愛せる自信があったよ」
「それに、私貴方を食べようと思って拾ったのよ?」
それを分かっていて私についてきたってことでしょう?



