「それで、心の整理はついたのか?」
心の整理ね…そんな質問をしてくるなんて大魔女様は意地悪だ。
「大魔女様なら今の私の心を見透かすのなんて容易いのでは?」
「そうだな。しかし、見透かさずとも貴様の今の顔を見れば分かる」
___まだ、翡翠の事が忘れられないんだろう?
大魔女様の言葉が、酷く耳に響いた。
「本当、貴女は意地悪ですね」
「ふふ、貴様をからかうのが楽しくてな」
「楽しまないでください」
「すまない。そう拗ねるな」
拗ねてなんかいないわよ…って言ってる時点でそうなるわね。
「___来る…」
「え?」
突如、大魔女様はトーンを落としてそう言った。
そして見据えるのは私が入ってきた大きな扉。
来る、とは一体何が来るというのか。
「まぁ、すぐに分かるさ」
私の表情から心を読み取った大魔女様は、クスリと楽しそうに笑ってみせた。
「すぐに分かるとは、一体どういう___」
そこまで言いかけた時___部屋の扉が静かに開いた。
そして聞こえたのは、
「綺麗だよマリー。純黒に包まれた宝石のよう」
私がずっと聞きたかった声と、
「けど、隠しきれない美しさをその緋色の髪が見事に表してくれている」
あの子が言うだろうと想像していた台詞そのもの。



