そんな私を見た大魔女はフッと笑うと、「そうか。その人間を愛しているのだな」と言った。
確かにいつからだろう、気づけば翡翠のことを愛してしまっている自分がいた。


好きだと思いを告げ続ける彼にいつしか惹かれてしまったんだ。

けど私は大きな壁の前で立ちふさがってしまい諦めた。
翡翠にはもっと相応しい相手がいると、人間の方がいいと。


「なら」


俯く私に大魔女様が近づき、目の前に影ができたかと思うとグイッと顎を掴まれ顔を上げられた。


「私の息子と結婚しないか?中々いい男だぞ」


そして思わず体も思考も止まってしまうような言葉を、大魔女様は口にした。


「……大魔女様の、ご子息…?」

「あぁそうだ。忘れるのなら新しい恋をとよく言うだろう?」


にしても、いきなり結婚をしないか?なんてぶっ飛んでいると思うのは私だけだろうか。


「地位も名誉も金もある。ルックスだった私に似ていい男だ」


でも、それで忘れられるのなら、それで翡翠が私のことを諦めてくれるのなら。
悪くないと思ってしまった。


「まぁ、強制するつもりはない」


さぁ、どうする?と大魔女様の赤い瞳は私を見透かすように問いかける。
ゴクリと唾を飲んだ私が出した答えは、


「お見合いをさせてください」


翡翠から距離を置くこと。