それだと、全てを知っているかのような言い方。
否、大魔女様は全てを知っておられるのかもしれない。
「生活は普通ですよ」
「ほぉー…好きだあしていると迫られて、それが普通だというのか」
「それは…普通ではないかもしれませんが。いたって普通の生活をしています」
ただ問題なのは、翡翠が私のことを嘘か真か「好き」だということだけ。
たまに見える切なそうな表情は本気っぽいものを感じるのだけど…。
私は魔女だ、人間が好きになっていい相手ではない。
「なぁ緋色の魔女よ。貴様は翡翠のことをどう思っている」
「……どう、とは…」
「嘘はつくなよ。どうせすぐにバレる」
翡翠をどう思っているか、か。
ここなら彼女以外聞いていない。大魔女様しか聞いていないのなら…誰にも話したことのないことを話してみてもいいかもしれない。
どうせ、嘘などつけないのだから。
「彼…翡翠には好きだと5年も言われています。しかしながら、これから先も長生きする私と違って彼は人間、寿命はあと100年もない。だから私は彼の気持ちに答えることなどできません。先に逝かれるのは辛いですから…」
想う相手が先に死んでいく姿など、見たくはない。
人間の命はどうして、そう短いのか。



