「そんな心配はいらないわ」

「するに決まってるじゃん。マリーの美しさは魔女の世界でも有名だから」

「私より綺麗な人ならいくらでもいるわよ」


そう言ってみるものの、翡翠は「マリー以外いるわけないじゃん」と言って絶対に譲らない。
どうしてそこまで私に執着し、こだわるのか分からないけど…本当変わった子。


「私は大魔女様が一番美しいと思うわ」


大魔女様とはこの魔女界のトップに君臨しているお方。
5466歳と誰よりも長く生きているにもかかわらず、魔力も美貌も衰えない。

魔女というには相応しいお方だわ。

それでも翡翠は納得がいかないようで、頬を膨らませて何かを呟いた。


「何?言いたいことがあるなら言いなさい」

「別にないよ。それより時間はいいの?そろそろ出ないとまずいんじゃない?」


無理矢理話を逸らしてきた翡翠だけど、時計に目をやれば確かにそろそろ出ないといけない時間で、バッグを手に持つと外に用意してある魔獣の背に乗った。


「それじゃ、行ってくるわね」

「うん、気をつけて」


…と、お見送りのキスを頬に翡翠が落とすと私は翡翠の額にキスを落とす。


「いい子で待ってなさい」


そう言って魔獣を集会場へと走らせた。

翡翠の姿が見えなくなる直前___彼が、不敵に笑ったような気がした。