ある桜の咲き始めた春の日。
まだ冷える朝方、真琴は迎えに来た蒼人とふたり、そっと家を出た。
心配しないでほしいという短い手紙のみを残して。
真琴が大学を受験していないと知って、両親はどんな反応をするだろうか。
蒼人と共に海を渡ると知って、何を思うだろうか。
烈火の如く怒り狂うのか。
心配が現実になったと頭を抱えるのか。
激しくはない雨が、咲き始めの桜の花を無情に叩く。
きっとその景色を見た以上に胸を痛めるに違いない。
それでもふたりで生きていこうと決意した。
一本の傘にふたりで入り、振り返ることなく歩き出した。
end



