それ故、妹は自分に依存するように物理的にも心理的にも距離が近かったが、蒼人はそれに喜びに感じていた。
中学に上がる頃、両親から母とは血が繋がっていないのだと聞かされた。
父は母とは再婚で蒼人は前妻との子供らしいが、真琴は今の両親が結婚して出来た子。
母親は違えど間違いなく兄妹だと念を押された気分だった。
母が自分たち兄妹の近すぎる距離感を心配しているのもわかっていた。
女の勘なのか、母の勘なのか、どちらでも構わないが侮れないものだと思う。
しかしそうなる状況を作り出したのは、他でもない両親である。
もしも普通の家庭のように当たり前の愛情を真琴が両親から受け取っていれば、妹はここまで自分に執着することもなかったかもしれないと蒼人は考えていた。
如月家は稀に見る医者の家系で、病院の経営はしていないもののその腕で名を上げている。
特に父の俊也は心臓外科の権威としていくつも難しい手術を成功させており、家で子どもたちと遊ぶよりも優先すべき命が医師としての俊也を待っているのも理解していた。
厳しい両親ではあるが、子供に対する愛情が全くないのかといえばそうではないということも蒼人はわかっていた。
ただ表現するのが下手なのだ。
そして伝える機会が他の家庭に対してあまりにも少ない。
だからこそ、蒼人は真琴に対し自分の黒く醜い感情が湧き上がるのを押し留めたりはしなかった。
健気で可愛い真琴を守れるのは自分しかいない。
それを咎めるのは両親であろうと許さない。
しかし、その自分でも制御不能な感情を真琴にぶつける気はなかった。



