春の雨


何度も角度を変えて唇が重なり、そのうち重ねるだけだったキスが深いものに変わると、背筋に電流のような快感が走り抜け、真琴はぶるりと身を震わせる。

「まこ…」

幾度も想像した兄の自分を呼ぶ濡れた声。
唇を重ねる合間に呼ばれる吐息に耳を擽られる。

何も考えられないほど激しく口内を侵食され、立っていられなくなるとそっとソファに押し倒された。

覆いかぶさるように蒼人は真琴の上になり、そのまま何度もキスを交わした。


「あおくん…、一緒にって……」

濡れてしまった唇を拭ってくれる蒼人に、今更ながらドキドキと胸が鳴る。
キスを中断し、背中を支えられソファに横並びで座り話をする体勢を作った。

「俺なりに考えたんだ。まことどうしたらずっと一緒にいられるか」

その言葉だけでも嬉しくて、真琴は頷いたまま俯いた。

「血の繋がった兄妹で、学生で…。俺たちが一緒にいるには障害が多すぎる」
「……うん」
「だからまずは、超えられるものから超えるしかない」


蒼人はずっと悩んでいた。

彼もまた真琴同様、血の繋がった妹に恋愛感情を抱き育った。

小さい頃から守るべき対象で、可愛くて仕方なかった。
両親が多忙で家にいる時間が少ない分、自分が真琴を守らなくてはと幼心に思っていた。

人より何でも器用にこなしてきた自分と違い、妹は期待をされた分だけ純粋に頑張る。

両親が勝手に定めた基準を満たさないというだけで努力を認められず泣いていた真琴を、蒼人は手放しに甘やかし可愛がった。