ここまできて引けない。
引けるわけがない。
この決意をするのにどれだけ考え抜いたか。
実の兄に恋するなんて自分はどこかおかしいのではないかと、今までどれだけ悩み抜いたか。
その思いで口を開こうとすると、それを阻止するように蒼人が口火を切った。
「まこ、これは俺が処分する」
「あおく、」
「それ以上は……聞けない」
「ま、待っ」
「わかるだろ?」
辛そうに顔を歪め、真琴の肩を掴む指先に力が籠もる。
有無を言わさぬ力強い声音。
努めて冷静であろうとするその声は、何の温度もなく真琴の耳に届く。
絶望に目の前が覆われ、息も出来ないほど苦しい。
それでも蒼人が自分を見て辛そうにしているのを目の当たりにすると、弾かれたように我に返り俯いて顔を隠した。
目と目の間が異常に熱い。
恥ずかしい。
悲しい。
悔しい。
辛い。
消えたい。
いろんな感情が一気に押し寄せてきて、少しつつかれただけで涙腺は決壊してしまうだろう。
滲んだ視界の先に一瞬見えたのは、苦痛に歪んだ兄の顔。
そんな表情をさせてしまった自分がたまらなく悲しくて、一秒でも早くこの場から立ち去りたかった。



