……『どうする?』

このまま何事もなかったように、この想いを蒼人に隠したまま、永遠に生きていくのか。
それにこの先耐えられるのか。

真琴は頭を抱えた。

「かず兄」
「んー?」

懐かしい呼び名に和哉の頬が緩む。
ちょうど十歳年の離れた従妹が可愛くて、一人っ子の和哉は初めて会ったときからずっと兄と呼ばせていた。

カーテンの中に入りベッドの脇に座ると、真琴が頭をこてんともたせかけてくる。

「かず兄は、もし私が…」

そこまで言って真琴は口を閉ざした。

和哉は先ほどの真琴の様子で薄々感付いてはいた。
親戚が一同に集まる盆や正月しか会う機会もなかったが、小さい頃から真琴は蒼人にべったりだった。

それは少し他の兄妹と違って見えることもあった。
真琴の執着はもちろん、それを受け止めて甘やかす蒼人の愛情もまた和哉には異質に見えた。


もしも真琴が自分の感情に戸惑いを感じているとするならば…。

本来は正してやるべきなのかもしれない。
それは教職員として、社会人として、従兄として。

「もしまこが?」
「……」
「何悩んでんのか知らないけど、俺はもしまこが犯罪者になったって嫌いになることはないよ」