◇◇◇
「和くん!まこ来てない?」
扉を開ける大きな音と慌てたような蒼人の声で真琴は目を覚ました。
「でかい声だすな。ここ保健室だぞ?」
「いいから!まこは?」
「来てるよ。奥で寝てる」
匿ってもらおうだなんて思ってはなかったものの、あっさりバラされてしまうのも憎らしい。
「やっぱり昨日の雨か」
「寝かしといてやんな。三限も無理そうなら帰らせるよ」
「それなら俺が」
「蒼人は授業中だろ?」
「自習なんだよ」
「関係ない。ほら戻った戻った」
有無を言わせぬ言い方にいつもの和哉らしくないと感じたものの、至極正論な為言い返すことも出来ず、蒼人は後ろ髪を引かれながら教室へ戻った。
真琴は目が覚めたものの出ていくタイミングも勇気もなく、腕で体重を支え起き上がったまま動けなかった。
「まこ、起きたんだろ」
「…うん」
「どうする?」
きっと和哉が問うているのは授業に戻るのかどうか。
体調が悪いと本気で思ってるわけではないだろうが、少なからず心配してくれていると真琴も感じている。
だが真琴には別の意味に聞こえ、昨夜のような震えが身体中を覆う。



