彼、岡野和哉(おかの かずや)は蒼人と真琴の母親の兄の子。
つまり彼らの従兄にあたる。

和哉は真琴のぶっきらぼうな返答に笑うと、くしゃっと髪を撫でてカーテンの外に出ていった。


蒼人が医者を志したのは、この和哉の存在が大きいのではないかと真琴は思っている。

和哉は如月家ほどではないにしろ、医者や医療従事者に囲まれて育った。
蒼人と真琴の伯父にあたる和哉の父も医者だった。

しかし、和哉は医者になる道を選ばなかった。
自分が何をしたいのか考え、親の言いなりになることもなく自分の進むべき道を決めた。

セクシャルマイノリティを抱えていた和哉は、自分が学生時代に保健室の先生に多分に世話になったこともあり、自らもその道に進むと決意した。

猛烈な反対を押し切り、親の援助もなく奨学金と自分で稼いだバイト代で養護教諭の資格を取得した和哉の姿は、当時中学生になったばかりの蒼人には強く印象に刻まれた。

親の言いなりになるのではなく、自分が将来何をしたいのか。

結果蒼人は変わらず医者という職業を選んだが、それは両親の影響ではなく自分の意志で決めた夢で、今まで以上に勉学に身を入れるようになった。


そんなことを考えていると、徐々に頭がぼーっとしてきた。
昨夜寝ていないせいで、横になれば睡魔が訪れる。

二時間目くらいまではさぼってやろうと真琴はゆっくり目を閉じた。