次の日の朝、真琴は蒼人が部屋から出てくる前に登校しようと、いつもより二時間も早く起きた。

どんな顔をして蒼人に会ったらいいのかわからなかったし、昨夜は何もしないでベッドに入ったため、今自分の格好は皺くちゃになった制服姿のままだった。

部屋の鏡に映った自分の酷い姿にため息をつき、一旦ルームウエアに着替えて一階に降り洗面所に向かう。
簡単にシャワーを浴びて髪を乾かしてからもう一度自室に戻り、クローゼットからスチームアイロンを取り出し制服に当てる。

昨夜の悪行がなかったことのように伸びていく皺。
自分の心の中の膿もこんな風にスッキリなくならないものかと、またため息が漏れる。

綺麗に整えた制服を身に着け、ブラシで背中に届くほど長く伸びた髪を撫で付けてから鞄を持つ。

こんな朝も両親は家にいない。

蒼人もまだ起きてくる気配はない。

真琴は朝食も食べず、いつもより一時間早く家を出た。


昨夜の雨が続いており、朝から本降りでどんよりと暗い。
学校に着くなり早速保健室へ向かい、我が物顔で勝手に入ってベッドに横になった。

「早いね。どうした?」

この高校の養護教諭である岡野が年季の入った黄色いカーテンを開けて覗き込む。
真琴はその声が聞こえないかのように無視を決め込んでいた。

「最近蒼人見てないけど元気?」

出てきた名前に華奢な肩がピクリと小さく反応する。

「…喧嘩でもした?」
「先生うるさい。頭痛いの、ほっといて」