外で冷たく降る雨のせい。
さぼって帰ってきた蒼人のせい。
勝手に部屋に入っていた自分のせい。
いつの間にか眠ってしまった自分のせい。

兄を…好きになってしまった自分のせい。


「まこ、お前」
「…っ、ちゃんと渡したからっ」

掴まれた腕を振り切って部屋を出ると、急いで自分の部屋に入り大きな音を立てて扉を閉めた。
身体全体が脈打って震えが大きくなっていく。

涙目だった妹を心配して扉をノックする蒼人。

「まこ、どうし」
「もう寝るから」

震えそうになるのをぐっと力を入れ、振り絞って声を出す。

何も気付かれないように。
何も悟られないように。

そう願って…。

「大丈夫だから。ごめんね、あおくん」


ごめんね。
謝りたくなんかないのに、真琴は涙を堪えて繰り返す。

「ごめん。寝るね」

そう言われて無理矢理部屋に入るわけにはいかない。
蒼人は引き下がるしかなかった。

「あったかくして寝ろよ」

その優しい言葉に余計涙が溢れてくる。

心配してくれる兄に対して何も言えなかった。
腕を掴まれて、熱を計るために額を合わせただけで欲情するような妹だと思われてしまったら。

そう考えただけで震えるほど恐ろしい。

制服のままベッドに入ったところで眠れるはずもなく、その晩真琴は一睡も出来なかった。