しとしとと雨の降る音。
カーテン越しの空はどんよりと濁った炭の色をしている。

うとうとしていた真琴の耳にカタンと物音が聞こえた。
瞼が重たくて上がらない。

そのまま意識はまた夢の中へと彷徨い始めた時。


「――――…こ、まこ」

柔らかい声に導かれ目を開けて、一瞬これが夢なのか迷う。
そして視界に蒼人の困った顔と自分の部屋ではない天井が写り、一気に覚醒した。

「あ、あおくん…っ?!」
「どしたのお前、俺の部屋で」
「じゅっ、今日、塾じゃ…なかったの…?」

焦り動揺し汗が一気に噴き出す。

なんと言い訳したらいいのか咄嗟に言葉も出ない。
心臓がこれ以上ないほど早く大きく打っている。

「急に雨降ってきてさぁ。傘もないしさぼった」

およそ他の受験生が聞いたら癇に障るような発言。
だが元々蒼人に塾など必要なかった。

エスカレーター式に上の大学に進むのではなく、外部の偏差値の高い国立大の医学部を受験するという蒼人。

センターや大学別に合わせた模擬テストが受けられるというので、母親に勧められテストのある月曜と木曜だけ通っているのだ。

真琴は慌てて身体を起こしベッドを降りる。

その時にポケットの中身がくしゃりと音を立てた。