週明けの月曜日。
放課後に片瀬と二人、ファーストフードで軽めの夕飯を済ませ家に帰ってきた。

途中急に雨が降ってきたせいで少し濡れたコートを浴室乾燥にかけ、タオルでさっと髪を拭く。

そのまま二階の自室に上がりベッドに腰を下ろした。
ごろんと後ろに倒れるように横になり、先ほどまで一緒にいた片瀬の言葉を反芻する。


『やっぱ蒼人先輩が留学するって本当なんだね。さっき職員室で大学の留学システムの話してたよ』


いつかそんな日がくるのではと思っていた。
蒼人は幼い頃から賢く、親戚からの期待も大きい。

色んな経験を積み視野を広げるには、一度世界を見ておくことも重要だと父親や叔父が蒼人に熱弁を振っているのを、真琴は何度も耳にした。

それがこんなにも早くに現実味を帯びてこようとは。
真琴は動揺を必死に隠し片瀬と別れた。



鞄から今日二年の先輩から受け取った手紙を出しポケットに入れると、蒼人の部屋に入る。

相変わらず片付いていない部屋。
ベッドの淵には漫画が何冊か置かれている。眠る前まで読んでいたのだろうか。

今日は部屋着が見当たらない。
洗濯に出されているのかもしれないと、少し残念に感じた。

ベッドに座りパラパラと漫画を見ると、兄弟で結束して敵を倒すクライマックスのシーンが描かれている。
パンっと音を立てて閉じ、元あった場所へ放った。