蒼人と真琴は、半分だけ血が繋がっている。

蒼人は父の俊也と前妻との間に出来た連れ子で、加奈子と再婚し真琴が生まれた。
二人は異母兄妹になる。

中学に上がる前にその真実を知らされても、真琴はあまりショックを受けなかった。
むしろ自分も母の連れ子で、蒼人とは全く血が繋がっていないと言われたほうが良かったと感じていた。

それはいつも比較される優秀な兄に対する劣等感からくるものではなく、決して人には言えない感情からもたらされる、育ててはいけない気持ちだとも理解もしていた。

両親は共に忙しく、また厳しい人たちだった。
小学校の頃から大学まで一貫教育の可能な私立に通い、常に優秀な成績を求められた。

真琴は中学を卒業する頃には両親が求める優秀な娘ではいられないと戦線離脱したが、蒼人は常に両親や親戚の期待に応えてきた。

さらには忙しい両親に代わって真琴の面倒を見て、甘やかしてくれた。

それ故真琴の蒼人に対する執着は凄まじく、幼い頃は微笑ましく感じていた両親も、小学校を卒業する頃には少し気にかかっていた。

両親、特に母親である加奈子はその不穏な綻びを見て見ぬ振りをするように、また真琴の意識を蒼人から逸らそうとするように、過剰なほど成績へ口を出し塾へ行かせたりもしたが、全くの逆効果だった。

いつしか真琴自身が蒼人への想いを自覚しその言動を理性で抑制するようになったが、今も休日に蒼人と真琴が二人で出かけようとするのを加奈子は不安げな顔で見送る。

それに気付いていない真琴ではないが、特に何を言えるでもなく、なるべく自然に振る舞う以外に出来ることはなかった。