Chapter13 白紙への一歩

文化祭をなんとか乗り越えて、テスト期間を迎えようとしている。文化祭あたりを境に、翔と顔も合わせられずにいるのは、かゆくてしかたない。
「—優奈ちゃん?」
「えっ?」
学校帰り、不意に声をかけられて見た先には…
「瑠夏ちゃん、咲也!」
「ようやく見つけた。遅くなったね」
「すみません。文化祭でようやく姿を見られたので」
もう、会えないんじゃないかと思っていた。
「僕たちもなかなか時間がなくて」
「そう、受験生だからね」
「そっか…大変だね。って、私も来年か…」
「ええ。頑張りましょう」
会えたことに浮かれていられないかもしれない。私も気を引き締めないと。
「…ふたりは、これから帰る?」
「うん。いっ…あー、えーと、なんでもない」
「?」
「よければ、ごいっ—」
「な、なんでもない!さ、帰ろ帰ろ」
「うん…?」
瑠夏ちゃん、すごく焦ってた。なにかあったのかな。まあ、あまり踏み込むべきではないと思うけど。
そのとき、何やら女の子たちの黄色い歓声が体育館の方から聞こえてきた。
「な、なに…?」
尋常じゃないほどの声量だったから、気になってきた。特に用事があるわけでもないし。のぞいてみようかな。


「やばいやばい!」
「超イケメン!!」
「癒されるぅ…」
観客は女子が大半で、男子がかなり多いはずのこの学校だとは思えないくらいの、黄色い声援があがっていた。
見ると、バスケの試合をしていた。しかも、タイマンで。
「…あれ、翔!?」
ひとりは翔だった。いったいなんの試合をしてるの…?
私に気付いた翔は、相手と少し話して、私の方へ駆け寄ってきた。
「はぁ…はぁ…優奈、来てたのか」
「い、いま来たっていうか、制服で何してるの?」
「誰もいなかったから、バスケ部のやつとゲームしてた。なかなか勝てなくて…」
要するに、遊んでいたらいつの間にかギャラリーが集まっていたんだ。
「なあ、優奈」
「な、なに」
「俺が勝ったら、ひとつお願い聞いてくれないか?」
「はあ…」
「頼むっ」
「いいけど…」
「サンキュ」
定位置らしき場所に戻っていった。私が呆気に取られていると、周りの女子からの視線がとてつもなく痛かった。
「ねえ、あんた」
「は、はいっ」
横から気の強そうなひとが話しかけてきた。
「翔くんとどういう関係?」
「はい?」
「どういう関係だって聞いてんの」
「か、翔とは…古い友人、です」
威圧が強すぎて顔が見れなかった。な、なんでこんな目にあってるの。
「あんたが…ふうん」
「…?」
「あんた、名前は?」
「…優奈」
「優奈ね…やっぱりか」
えっ?
「これからよろしくね!優奈ちゃん」
「え、ええ?」
ほんとに怖すぎる、このひと。何考えてるんだろう。
「いい?私とあんたは友達。忘れんなよ」
「なんっ…」
「口答えしてんなよ」
「え、ええ…?」