午前一時三十分。
風の音がかすかにする自室で私は一人、机に向かっていた。
そして立ち上がると、とっくの昔に寝てしまった家族を起こさないように玄関を出た。
私の家は九階建ての六階。
フェンスから身を乗り出せば少し遠くに地面が見える。
あたりを見渡せば静かな住宅街が私を嘲笑い、満月が雲から見え隠れしている。
子供は幼い時から“他人の嫌がることをしてはいけない”とか“いじめはいけないこと”とか教えられる。
大人はというと“なにかあれば相談に乗る”とか“力になる”とか言う。
では、実際はどうか。
子供は幼い時から教えられているにも関わらず、いじめをする。
被害者が勇気を振り絞って大人に助けを求めたとしても都合の悪いこと、面倒なことには目をつむり、被害者の叫びよりも加害者の口裏合わせた発言を信じる。
この状況を変えるにはどうすればいいか。
簡単だ。
「この身を投げればいい」
空中で見る満月は今までで一番きれいだった。
向かっていた机には五つの封筒が残されていたとか。