「私、萌音!神崎萌音(かんざきもね)。お父さんたち、あそこで花屋さんをしてるの。悲しそうにしてるあなたを見つけて来たの」

萌音はそう言い、花を華恋に差し出す。そして「あげる」と言った。

「これ、マリーゴールドっていうお花なの。花言葉はね勇者なんだって。元気出してほしくて」

萌音は笑顔を見せる。お嬢様が決して見せない笑顔がとても綺麗で、華恋は見惚れてしまう。

「お嬢様!こちらにいらっしゃいましたか」

華恋の迎えに来た運転手が走ってくる。もう行かなければならない。華恋は「バイバイ」と手を振る萌音の手を慌てて掴んだ。

「ねえ、また私と会ってくれる?」

何故、初対面の子にこんなことを言ったのかわからない。こんなことを父や母に知られたら何と言われるかわからない。それでも、華恋はこの出会いを終わらせたくなかったのだ。

「いいよ。お友達になろ!」

萌音のその笑顔に、また華恋は見惚れてしまう。これが運命の出会いになることを知るのは、数年後のこと。