『私がもしも脳死状態とかになったら、私の臓器を病気と闘っている子どもに提供してほしいの。これが私にできる精一杯のことだから……』

華恋の頭に萌音の言葉が蘇る。この約束を叶えるかもしれない時が来るなんて、思ってもみなかった。ただ悲しくて涙しか出てこない。

「華恋……」

華恋をイザベラは抱き締める。その声は震えていた。そしてイザベラからも温かい雨が降り、華恋を濡らしていく。

「私も悲しい。萌音とお友達になれたから……。だからこそ、あなたに約束を叶えてあげてほしいの。だってこのまま目を覚さなかったら、萌音は何もできないまま人生を終えてしまう。でも、その約束を叶えたら、誰かの中で萌音は生き続ける。私は、萌音の一部が生きている世界で生きていたい」

華恋は萌音を見つめる。とても優しい人。愛しい人。誰かのために命など平気で差し出せる人なのだろう。そんな人を愛せて、本当に幸せだった……。

「萌音、約束を果たすわ……」