花束

絶望で目の前が真っ暗になっていく。華恋は萌音が眠る病室にフラフラとした足取りで歩き、その手を握った。脳死だというのにこの手は温かい。

「大丈夫よね？起きてくれるよね？」

脳死でも目を覚ますというケースは存在する。その奇跡を信じ、萌音の手を華恋は呼び続けた。そして、イザベラに頼んで花を買ってきてもらった。

「萌音、ストレリチアの花よ。イザベラに買ってきてもらったの。花言葉は輝かしい未来。あなたがいないと私の人生、輝かないわ。早く目を開けて……」

名前を呼び続けてもう五日経つ。萌音が目覚める気配はない。泣き続ける華恋を見つめ、イザベラは華恋を優しく抱き締めながら言った。

「華恋、萌音と約束したんでしょう？その約束を叶えてあげるべきなんじゃないかしら？」

イザベラの言葉に華恋は「ダメよ！！」と首を横に振る。そんなことをすれば、萌音は永遠にいなくなる。それだけはダメだ。華恋は首を横に振り続ける。