花束

人生にはある日突然、自分の願っていないことが起きることがある。それがいつ訪れるかは神様次第で、誰もその運命に抗えない。

萌音と約束をした数ヶ月後、その日は休日だった。穏やかで何もないいつもの日。華恋と萌音は前から見たかった映画を見に行き、楽しいデートをしていた。

「映画、とてもよかったね」

「ええ。とても感動したわ」

そんなことを言いながら二人で家に帰る。家に帰ったらイザベラからもらったマカロンを一緒に食べよう、この前社員旅行で行ったイギリスで買った紅茶を淹れてーーー。そんなことを華恋は考えていた。

刹那、人の悲鳴と車のブレーキを踏む音が響く。華恋が音のする方を見れば、暴走した車が華恋に向かって走ってくるところだった。まるでスローモーションのように見える。

「華恋ちゃん！！」

その時、華恋は腕を引かれる。最後に華恋が見た萌音は、優しい微笑みを浮かべていた。その優しい表情は車によって苦痛のものへと変えられてしまう。

道端にに華恋は尻餅をついてしまう。そして目の前には車の下敷きになり、血だらけになっている萌音だった。