花束

無駄に豪華な造りのドアを開け、華恋は豪邸と呼べる立派な家の中へと入る。すると忙しく動き回っていた使用人の一人が、「お嬢様、奥様と旦那様がお呼びです」と言った。

「わかったわ。ありがとう」

何となく、嫌な予感しかしない。あの人たちは「華恋」という商品のプロデュースすることしか頭にない。そのため、二人に呼び出される時には「勉強はしているのか？」や「ピアノは弾けるのか？」ということしか言われないからだ。

「失礼します」

逃げ出したいほど嫌だったが、それを心の奥底に隠して華恋は二人がいる部屋のドアをノックする。すぐに中から「入りなさい」という声がした。

華恋が入ると、机の上に四枚の写真を並べ、両親二人はニコニコしている。そして椅子に座るよう促され、華恋の嫌な予感はさらに増した。

「華恋、喜べ。婚約者候補が決まったぞ」

やはりそういう話か、と華恋はため息が出そうなのを堪える。父は四枚の写真やプロフィールを華恋に見せ、「全員イケメンだろ〜？」と嬉しそうに言った。