なんてこの世は残酷なんだろう。あの日、私があそこにいればこんなことにはならなかったはずなのに。それを恐れて私は消えた、消えてしまったんだ。この罪は、もう、償っても償いきれない。人の命はどうやっても償えないんだ。
 9月1日、私は生まれ変わる。そして、新しい人生を歩み始める。ブルックリンとして。ブルースなんて愛称捨てよう。あんな過去もう一生思い出したくない、ずっと怖がっていた私にはもう。「ブルックリン!起きて!朝よ!今日から学校よ!楽しみね!」この子はオリビア。オリビア・ローズ・バーゲーン。明るくて、とにかくうるさくて馬鹿で可愛くて綺麗な子。「そうね、早く支度して学校に一番乗りしましょ!」そう返すと彼女は縦に頭をブンブン振って犬のようにうん!と言って隣の部屋に姿を消した。私も支度をしよう。遅くなったら彼女を待たせてしまう。
 「ブルックリン!急ぎましょ!もう人がぞろぞろ校舎に入っているわ!」と慌てて走り始めるオリビア。朝の風に吹かれて彼女の髪の毛がサラサラと流れていく。本当に綺麗だ。「オリビア、そんなに急いだら怪我をしてしまうわよ。落ち着いて。」彼女は走ることに夢中で私の声が聞こえなかったようで、校舎に着いてからどうしたの、といった。私はなんでもない、と自信が無いような小さく震えた声で言った。オリビアは、にっこりと笑って私の手を取った。