「さて、魔法使いさん。今後の召喚方法を聞く前に、まずは名前と年齢を聞いてもいい?」
「まだそのネタ引っ張る?」
「最初に魔法って言い出したのは君でしょ
私は依鈴。ほら、君は?」
浮かれ気味に聞いた私とは対照的に、不満がありそうな表情をしてみせる君。
腕で口元を覆った隙間から、ほんのり色づいた耳が覗いていて。
数分前に自ら口にした "魔法" というファンタジックな表現を、恥ずかしがっていることに気づく。
その仕草が、らしいなと。
かわいい弟に出会ってしまったようで目尻を下げると、やわらかく、男の子の方へ腕が引かれた。
「透明の透に輝くで、透輝(とうき)
たぶん、依鈴の2つ下。
依鈴より、依鈴のことを知りたいと思ってる」
腕が引かれた時に、僅かに触れた透輝の指先は、季節知らずにあたたかい。
真っ直ぐにみつめてくる薄茶色の透き通った瞳の中には、青とシルバーのキラキラ。
そして、私。
心が波打ったのは、あまりにも透輝が真剣だったから。
「私よりって、どういう根拠で…」
「わかるよ。依鈴がわからなくても、僕にはね」
首を傾げた私が、眩しげに目を細めた透輝のキモチを知るのは、もう少し、先のこと。
【 きっかけのさよなら 】
これは、さよならがくれた、はじまりの5分間のお話。
ー… 魔法の夜が、くれたもの。
ー end ー



