「ふふ、魔法使いみたい!」
ふいに緩んだ、頭にのっていた力。
自由になったことをいいことに振り返って見上げると、澄んだ瞳をしたその人が、不服そうに私をみていた。
「1人で泣くなよって話なんだけど。
わかってる?」
「私には魔法使いがついてくれているみたいだから、大丈夫!」
見ず知らずの私に笑顔をくれた、あたたかい人。
数分前までは、窒息しそうなほど苦しい想いだけだったイルミネーションを、違った気持ちでみることができる。
お別れをした彼への想いは、魔法のように、指先一つで消せてしまえるものではないけれど。
それらも抱えて、私はまた、前を向いて歩いていけると思えるようになった。
たったこの、5分間で。
出会いが人を変えるというけれど、例えばそれは、こんな瞬間なのかもしれない。
まるで、魔法のように。
…なんて。
大の大人が、そんなファンタジックなことを思ってしまうのは、目の前で困った顔をしている男の子が、冗談めいてかけた、魔法のせいなのだろう。
そういうことに、しておこう。



