きっかけのさよなら。





「魔法って…」


少し離れた場所から戻ってきた男の子。


「スイッチ、入れただけだけどね」


かっこつけておいて、照れ臭そうに種明かししてみせる表情がかわいくて、思わず笑った。


笑いながら、私の気持ちを気遣って、イルミネーションを再びつけてくれた男の子のあたたかさに、目頭が熱くなっていくのを感じる。



「それでも、お姉さんが少しでも笑えたらいいなって思ってさ。

幸せに、なるべき人だと思うから」



「…ありがとう」



くれる優しさに、溢れ出した想いを指で拭ってみるけど、拭いきれずに、年上らしくいられない。

思えば最初から、年上らしくいられた瞬間なんてなかったけれど。



「…貸したんだから、使ってよ」


ふわりと、するはずのない透明な匂いがして、柔らかなものが私の頬に触れた。


それは、数分前に借りたハンカチで。

持っている私の手ごと包み込んで、涙を拭いてくれた。


近づいた距離にどうしたらいいか分からず、ごめんと、目線を下げる。


まるで叱られた子どもみたいだ。
年上なのは、私なのに。



少し悔しくてちらりと盗みみると、髪の毛に似た薄茶色の瞳と、ばっちりと目が合わさった。


のに、頭がくるりと他所を向かされる。


「え?なに…」


意味不明な行動に驚きながらも、頭に乗せられた意外と骨張った手が、中身通り、とてもあたたかいことに心がほくほくとした。



「もしまた泣きそうになったら、僕のこと呼んで」


「へ?」


一体どんな顔をしてそんなことを言うのか知りたくて、振り返ろうとしたのに、妨げてくる大きな手。


「いつでも、笑顔にするから」