ピケを座らせたこの席は、店の中で一番気持ちが良い席なのだろう。
 猫は、過ごしやすい場所を見つける天才だ。だからきっと、ノージーはわかっていてピケをここへ座らせた。

(猫だった時は断固として譲ってくれなかったのに)

 譲ってくれたのは猫特有の気まぐれだろうか。
 
(それとも、笑ってしまったお詫び?)

 ポカポカ陽気が気持ちいい。
 王都の秋は寒くて起きるのが億劫なほどだから、こんなすてきな場所を譲ってもらえたことは、とても特別なことのように思えてくる。

(ふん。許してあげるわ)

 誰に言うでもなく偉そうに心の中で呟いたピケは、ノージーが開いていたメニュー表を覗き込んだのだった。


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