ピケの予感は、当たらずとも遠からず、といったところだった。
 ノージーに連れられて入ったのは、一軒のカフェ。
 王城近辺にあるような華やかで気後れしそうな店ではなく、下町の家庭的な雰囲気のカフェを選ぶあたり、彼はピケのことをよくわかっている。

 一見すると、民家みたいなカフェだ。
 小さな門扉を押し開いて入ると、シンプルなアイボリーの外壁に、葉を真っ赤に色づかせた蔦が這っているのが目に入ってくる。
 カフェの入り口へ続くレンガの小道には、紅葉したブルーベリーの木や、赤い実をつけたクランベリーなど、実がなる植物が点々と植えられていた。小さな庭には、大きなクルミの木がドンと生えている。
 ところどころに置かれたリスのオブジェは、まるで入り口へ案内してくれているように配置されていた。

 ──カロン、コロン。

 扉を開けると、小さくてかたいものがぶつかり合うような音がする。
 なんだろうと思ってピケが振り返ると、扉にはドアベルの代わりにクルミの殻がいくつかつけられていた。
 庭にあったクルミだろうか。
 凝っているなぁと思いながら、ピケは店の中へと視線を移す。